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1. イントロ INTRODUCTION
南フランスあるいは南仏(なんふつ)といえば、プロヴァンスあるいはコートダジュールが思い浮かびます。ワイン通の方は、ラングドックとおっしゃるかもしれません。では、一体どこからどこまでをプロヴァンスというのでしょうか。その由来や変遷をさぐってみます。
▼もくじ
街の風景|
プロヴァンスってどこ?どんなところ?|
プロヴァンスの県|
オススメ図書
どこまでも続くのどかな田園風景を車窓から眺めつつ、TGVでパリからずっと下ってくると、モンテリマー辺りから突如日ざしが強くなり、赤レンガの屋根が多くなります。
そう!これでプロヴァンスに入ったことがすぐにわかり、なんとなくホッと一息つきたくなります。
地中海沿いの街々を歩くと、(「町」という言葉より「街」をつかいたくなります)家々のピンクや黄色の壁に緑の窓枠が、青く透き通
った空にとても映えて目に鮮やか。
ゴッホやゴーガンといった印象派の画家たちが、南の光を目指した想いがよくわかります。パリから南下する高速道路も「太陽街道」と名付けられています。夏のヴァカンス・シーズンには北部からの「民族大移動」で大変な混雑になります。
「プロヴァンス」とは、フランス共和国の南東部に位置する同国の旧地方(ancienne
province)の名称です。
プロヴァンスと言う名称はローマ帝国時代の属州だったことを示す「プロウィンキアProvincia」に由来し、旧プロヴァンス地方は中世における「プロヴァンス伯Comté
de Provence」家の領地がベースになっています。
プロヴァンスは、
今日の行政区分において「プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏Région
Provence-Alpes-Cote d'Azur」に包括されており、その頭文字を取って"PACA"とも表記されます(ちなみにフランスには22の地域圏があります)。この地域圏の名称通り、ローヌ河・アルプス・地中海という3つの特徴的な自然に囲まれた、広大で豊かな大地です。地中海の温暖な気候に恵まれているため、ゆったりと時間が流れて、人々も全体的に陽気でおおらかな印象です。
>>>詳しい地図はこちら
フランス南部のうち、ローヌ河からイタリアとの国境線までがプロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏です。
日本では「南フランス」や「南仏」と呼んでプロヴァンスを指すこともありますが、フランス南部にはピレネー、ラングドック・ルシヨン、アキテーヌといった地域圏がありますので、必ずしも「南仏=プロヴァンス」とはいえなく、ふさわしい呼称ではないでしょう。また、高級リゾート地として世界に名高い「コートダジュール(英語ではフレンチ・リヴィエラ、日本語では紺碧海岸)」とは、ニースを中心とした地中海沿岸部東部を指します。
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏の面積は、31,400km2で、地域圏庁(Préfecture
de Région)はフランス第2の都市マルセイユにあります。人口は4,506,151人(1999年)を数え、フランス全体で約60,000,000人ですから約7.5
%にあたります。18郡237市963町村があり、
うち34市町村が人口2万人以上、20万人都市は4つ(フランス全土で29)で、この地方の総人口の58.3%に相当します。住民の9割はマルセイユ、ニース、トゥーロンの3大都市圏、もしくは2000人以上の中規模の市に集中しています。経済としては、サービス77.5%、工業19.6%、農業2.8%となっており、観光が主産業といえます。
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏は、ローヌ河沿岸のヴォークリューズ県(84)、ローヌ河口のブシュ・デュ・ローヌ県(13)、地中海沿岸のヴァール県(83)、イタリアと隣接するアルプ・マリティム県(06)、
内陸部のオートゥ・プロヴァンス県(04)、プレ・アルプス山麓のオートゥ・ザルプ県(05)の6県で構成されており、それぞれの県には県庁があります。
ちなみに、ブシュ・デュ・ローヌ県、ヴァール県、オートゥ・プロヴァンス県が旧プロヴァンス地方でした。さらに、ヴォークリューズ県は旧ローマ教皇領Comtat Venaissinとオランジュ公国Principauté d'Orange、アルプ・マリティム県の大部分は旧ニース伯爵領Comté
de Nice、オートゥ・ザルプ県は旧ドフィネ地方Dauphinéで、それぞれフランスに併合されるまで独立した歴史を持ちます。
また、北西に隣接する
アルデシュ県やドローム県南部(ドローム・プロヴァンサルといいます)の一部もプロヴァンス色が濃いといえます。
上記のように、プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏は、歴史的背景が異なる複数の旧地方から成り立っているため、同一地域圏内とはいえ文化や伝統に違いがあります。
その境界線に関しては、人それぞれの捉え方があります。大まかにフランス南東部をプロヴァンスと一括りにすることもあるでしょうし、観光的にはプロヴァンス(マルセイユ、アヴィニョン、アルルなど)とコートダジュール(ニース、カンヌなど)と2つにわけるでしょうし、文化的・歴史的あるいは気候的にはプロヴァンス(ローヌ河流域)とコートダジュール(地中海沿岸)とアルプス(内陸・山麓)と3つにわけるでしょう。また、ワインの世界ではローヌ南部とプロヴァンス・コルスと区分されます。
そこで、このサイトで単に「プロヴァンス」というとき、この旧プロヴァンス地方にあたる地域を主に扱うことにします。 なお、コート・ダジュールはプロヴァンスに含めて扱います。
左が旧プロヴァンス地方の旗、
右が現プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏の旗。
前者はプロヴァンス伯の紋章(青地に黄色の百合)を簡易化したもので、
後者はプロヴァンス伯領(左側)、ドフィネ地方(右上)、ニース伯領(右下)の紋章を併せたもので
それぞれの県がフランスに併合されるまでに違う歴史を歩んできたことを示しています。
詳しい説明はプロヴァンスの紋章にて
紋章 |
県名 (code)
département
(旧地方名) |
面 積
人口(1999年度)
最高地点
市町村数 |
◎県庁所在地
・郡庁所在地
主な街 |
|
オートゥ・プロヴァンス(04)
les-Alpes-de-Haute-Provence
(旧プロヴァンス地方) |
面積:6,925ku
人口:139,561 人
最高地点:3,400m
4郡、30市、200町村 |
◎ディーニュ・レ・バンDignes
les Bains
・バルスロネットBarcelonette
・フォルカルキエForcalquier
・カステラヌCastellane
マノスクManosque |
|
オートゥ・ザルプ(05)
les-Hautes-Alpes
(旧ドフィネ地方) |
面積:5,549ku
人口:121,419 人
最高地点:4,102 m
2郡、30市、177町村 |
◎ガープGap
・ブリアンソンBriançon |
|
アルプ・マリティム(06)
les-Alpes-Maritimes
(旧ニース伯爵領) |
面積:4,299ku
人口:1,011,326 人
最高地点:3,143 m
2郡、46市、163町村 |
◎ニースNice
・グラースGrasse
カンヌCannes、アンティーブAntibes |
|
ブシュ・デュ・ローヌ(13)
les
Bouches du Rhône
(旧プロヴァンス地方) |
面積:5,087ku
人口:1,837,719 人
最高地点:1,041 m
4郡、57市、119町村 |
◎マルセイユMarseille
・エクスAix-en-Provence
・アルルArles
・イストルIstres |
|
ヴァール(83)
le Var
(旧プロヴァンス地方) |
面積:5,992ku
人口:815,449人
最高地点:1,715 m
3郡、43市、153町村 |
◎トゥーロンToulon
・ブリニョルBrignols
・ドラギニャンDraguignan
サントロペSaint
Tropez |
|
ヴォークリューズ(84)
le
Vaucluse
(旧コンタ・ヴネサン教皇領および旧オランジュ公国) |
面積:3,567ku
人口:499,685 人
最高地点: 1,912 m
3郡、24市、151町村 |
◎アヴィニョンAvignon
・アプトApt
・カルパントラCarpentras
オランジュOrange |
|
アルデシュ(07)
l'Ardèche
(旧ラングドック地方) |
面積:5,529ku
人口:286,023 人
3郡、33市、339町村 |
◎プリヴァスPrivas
・ラルジョンティエールLargentiere
・トゥルノン・シュル・ローヌTournon-sur-Rhône |
|
ドローム(26)
la
Drôme
(旧ドフィネ地方) |
面積:6,530ku
人口:437,778 人
3郡、36市、369町村 |
◎ヴァランスValence
・ニヨンNyon
・ディDie
モンテリマーMontélimar |
|
ギャール(30)
le Gard
(旧ラングドック地方) |
面積:5,853ku
人口:623,125 人
3郡、46市、353町村 |
◎ニームNîmes
・アレスAlès
・ルヴィガンLeVigan
エグ・モルトAigue-Morte、サン・ジルSaint Gilles |
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地球の歩き方 南仏プロヴァンスとコート・ダジュール&モナコ |
|
「地球の歩き方」編集室 |
ダイヤモンド社 |
旅の定番。フランス全国版もあるが、本書はプロヴァンスに特化しているだけあって、地図、見所など深く突っ込んだ情報がうれしい。読者からの投稿もあり、現地情報に事欠かない。
とりあえず抑えておきたい街はたいてい載っている上に、ハンディーサイズで持ち運びやすいため、いつまでたっても手放せない一冊で、何度お世話になったことかわからない。
初心者からリピーターまでを満足させる情報が満載だが、ゴージャスなヴァカンスというより、庶民的な旅に向いているかもしれない |
Michelin
Provence, Cote D'Azur |
|
Michelin |
Michelin Travel Pubns |
ミシュランによる、プロヴァンスとコートダジュールのロードマップ。車の旅には必携。
20万分の1スケール(1cm=2km)で、高速autoroute、と国道route nationale、県道が網羅されている。主要都市(エクス、アルル、アヴィニョン、カンヌ、マルセイユ、モナコ、ニース、トゥーロン)の地図や道程表(都市間の距離・所要時間)もついていて便利。現地では、高速のサービスエリアやガソリンスタンドでも手に入る。 |
もっと知りたい 南仏プロヴァンスQ&A100 |
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電通映像事業局編 |
亜紀書房 |
「ローマ時代に発達した有名な都市は」「アルルはゴッホにとってどんな場所だったのでしょうか」「プロヴァンス料理の特色をあげてください」「ラヴェンダー街道を紹介してください」「長い期間、プロヴァンスに滞在するにはどうしたらいいですか」といった、一問一答形式で、プロヴァンス事情を様々な角度から伝える |
プロヴァンス 碧い海と碧い空と… |
|
田辺 保 |
恒星出版 |
大阪市立大学名誉教授の著者が、前半部分では「ローマ時代」「キリスト教伝来」「中世」といった歴史や、後半部分では「ペトラルカ」「ミストラル」「ドーデ」「パニョル」「ジオノ」といった文学者などを通して、プロヴァンスの魅力を丁寧に紹介。
プロヴァンスの入門書として最適。旅行ガイドの次に買うならこれ。リピーターや留学生は必携。
ちなみに、イラストを担当した娘さんの作品は、Keiko
Tanabe Web Siteに続々発表されている。 |
まだまだオススメ本あります→プロヴァンスに関する本
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