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5-A.
プロヴァンスのお酒
Les vins de la Région Provence-Alpes-Côte d'Azur
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏には、2つのワイン産地がまたがっており、「コート・デュ・ローヌ Côte du Rhône」と「プロヴァンス Provence」と明確に区別されています。ワインファンにとっては、この呼び方の方がなじみやすいかもしれません。
ワインはその土地の風土と切っても切れない関係にあります。環境によって味わいの印象が変わるし、飲む場所によって選ぶワインも変わってきます。だから、何も高級ワインにこだわる必要はない。 プロヴァンスにはプロヴァンスならではの、季節感や地域の習慣の薄れた都会とは違った、ワインの楽しみ方があります。
▼もくじ
プロヴァンスのワイン概要|パスティス|参考リンク|オススメ図書

基本編「ローヌ南部のAOCワイン」
基本編「プロヴァンスのAOCワイン」
番外編「ワインについて」
番外編「フランスワインについて」
ブログ「南仏ワインばか」
プロヴァンスは、ブドウとワインに関してフランスで最も古いの歴史を持った地域。また、長い日照時間と水はけの良い石灰質の土壌がぶどう栽培に最適なため、最も種類が豊富で、他地方では見られない独特な品種が多い。当地の耕作面積の約1/2がブドウ畑で占められているほど。
【歴史】
紀元前6世紀にギリシア系フォカイア人(現トルコ・イズミールあたり)がローヌ河口のマッサリア(現マルセイユ)に移住した際に、
同地ほか、ニカイア(ニース)、アンティポリス(アンティーブ)、アンテノポリス(サン・トロペ)などに、ブドウ栽培とワインを持ち込んだとされ、やがてガリアを支配したローマ人によってブルゴーニュやボルドーへと伝わっていきました。
中世では、修道院の発達とともにワイン作りが盛んになりました(マルセイユのサン・ヴィクトール修道院、レラン諸島のサントノラ修道院、ニースのサン・ポン・ヴェネディクト派修道院、ル・トロネのシトー派修道院など)。とりわけ、14世紀に教皇がアヴィニョンに座したときに、特別ワインとして「シャトーヌフ・デュ・パープ(法王の新城)」が作られ、大いに栄えました。
さらに大貴族や王室軍隊の将校が、プロヴァンスのブドウ園の多くを獲得し運営するなどワイン業が繁栄しましたが、1860年アルルで最初に見つかった新大陸(アメリカ)の寄生虫フィロキセラによって、旧大陸(ヨーロッパ)のブドウ畑が壊滅的被害を被りました。このとき、フランス種のブドウとアメリカ種の接木により、
この災禍を逃れ、フランス全土とプロヴァンスの一部のワイン畑が蘇りました。
19世紀後半に鉄道網が拡がると、安価で良質な南仏ワインがパリに大量に流れ込むようになりました。
1895年、「コート・ド・プロヴァンス」という名称が生まれ、前述の「シャトーヌフ・デュ・パープ」類似品を防止し品質を守るための運動が実り、1919年にAOC(原産地統制銘柄)制度が考案されると、1936年、「シャトーヌフ・デュ・パープ」がAOC第一号となったことは特筆すべきでしょう。
1955年、コート・ド・プロヴァンスの先駆者ともいうべき、23の農園が「格付け銘柄ワイン」がINAOによって認定されました。さらに1977年、コート・ド・プロヴァンスは、確かな価値と品質の保証を持つ、AOC原産地統制ワインとしての仲間入りを果たしました。
【産地とブドウ品種】
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏には、2つのワイン産地(vignobles)がまたがっています。ローヌ河の渓谷に沿って南北に長大な(リヨン〜アヴィニョン間の)「コート・デュ・ローヌ南部」と、地中海沿岸域に東西(アルル〜ニース)とコルシカ島の「プロヴァンス・コルス」。

「コート・デュ・ローヌ」は、ブルゴーニュの南に位置し、さらに北部と南部の2つの地域にわかれ、南部はアヴィニョンを中心に広がり、フランス語では「メリディオナルMéridional」といいます。高アルコール度で色が濃く、たっぷりした果実味とスパイシーさが特徴的な赤ワインが有名。「プロヴァンス」では、ブドウの種類が豊富なこともあり、辛口でフルーティーなロゼが有名。ちなみに赤ワイン用の黒ブドウには、「ローヌ南部」ではシラー種(Syrah、フランス最古種)、「プロヴァンス」ではグルナッシュ種(Grenache)が主体に使われています。※地図はGuideWebProvenceより
【有名なワイン】
かつては、色とコクを出すためにボルドーにブレンドされるなど、「安い地酒」のイメージでしたが、品質向上が急速に進み、ローヌは高水準のわりにリーズナブルな産地となりました。1998年、1999年、2000年は「素晴らしい3つ子」のヴィンテージと呼ばれ、これらのうちどの年のものを買っても満足が保証されているそうです。とりわけ、「シャトー・ヌフ・デュ・パープ」と「ジゴンダス」の濃厚な赤がローヌ南部のAOCワインの中でも有名です。
プロヴァンスのワインは、オリーブオイルとニンニクが使われる料理と相性がいいとされます。例えば、マルセイユの郷土料理ブイヤベースと「カシ」の白ワインが好相性というふうに、訪れた土地のワインを頼めば、地料理がさらに美味しくなること請け合い。また、カーブのあるホテル・民宿やワイン関連のお祭りも多く、もちろん見学もデギュスタシオン(試飲)もできますから、旅と絡めるのにうってつけ!

番外編「ワインについて」
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ところで、高級なAOCワインはレストランかホテル(あるいは日本で?)で飲むもの。
学生が飲むのはヴァン・ドゥ・ターブルといって、せいぜい30FRFくらいのブレンドワイン。おつまみにマルシェで買ったチーズは欠かせません。みんなで誰かのうちに集まってワイワイやるので、質より量が重要なのはどこでも一緒です。ただ、保存料が入っていないし日本の輸入ものよりは美味しくて香りもいいはず(当たり前か)。ホームステイしたおばあちゃんは、赤ワインを炭酸水で割って飲んでいました。肩に力を入れずに飲めばいいんです。カフェで頼むと、ご丁寧に氷をくれることも。ワインのロック(笑)
また、日本ではロゼワインの地位が低いように思われますが、生産量が7割を占める「ロゼどころ」とも言うべきプロヴァンスではとてもよく飲まれています。実際、現地で飲むと本当に美味しい!みずみずしくてコクがあるため、日差しが強くて乾燥した夏にピッタリです。日本でも五月晴れの昼間なんかに合うと思うんですが…
そうそう、ワインをじゅうたんにこぼした時は、こぼれたところに塩をたっぷり盛って十分吸い込ませておいて、翌日酔いがさめてからふき取っていました。お試しあれ!Doucement
!!

・フランス食品振興会(SOPEXA)
小冊子「コート・デュ・ローヌのワイン。」 「ローヌワイン 12の質問」
・「ワイン受験講座2006」
・「ワインが語るフランスの歴史」
・「図説
フランスワイン紀行―知られざる名産地を訪ねて」
・「日本ソムリエ協会教本2006」
・AOCとは |
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 プロヴァンスを代表する庶民の酒と言えば、薬草・香草系のリキュール「パスティス(pastis)」。プロヴァンス語で「混ぜ物」あるいは「似せたもの」の意味。映画「ムーランルージュ」にあるように、19世紀末の芸術家たちを魅了するも、中毒性が高くその命を奪った禁断のアルコール「アブサント(absinthe)」の代用品としても知られる。
なお、アニス系リキュールは、イタリア、ギリシャ、スペイン、トルコ、シリアなど地中海沿岸諸国で好まれ、「砂漠のミルク」とも呼ばれる。無色透明のけっこう強いアルコール(40℃くらい)で、水などで割ると白黄色に濁ります。アニス(anis)のツーンとした匂いと甘苦い味わいが独特で、慣れるまで時間がかかりますが、熱い土地だけにミントのノド越しがすっとするので好まれているのでしょう。「リカール(Ricard)」、「ペルノ(Pernod)」や「サンカンテアン(51)」が有名な銘柄。水5にパスティス1の割合で割って飲みますが、水の代わりにオレンジジュースにしても美味しい(割れば割るだけ量が増える、魔法のお酒!)。地元のじいさん達は終日ぺタンク(petanque)をあーでもねーこーでもねー興じながら一杯と言わず1本ひっかけていました。彼らと話すと例外なくみなアニスの匂いがすると言ってもイイでしょう。
ほかにも似たようなリキュールのスュズ(Suze)という、ピカソが愛したお酒があります(左図:ピカソによる"Suze"1912)。

・メゾン・ド・パスティス La
Maison du Pastis
マルセイユの旧港、カヌビエールを背にして右手の岸にあるのですが、もうそのまんまです。まさに「パスティスの家」です。パスティスしかありませんが、その種類は50種類をゆうにこえています。パスティスグッズも豊富で、51やRicardのグラス、水差し、Tシャツなんかまで売っています。(中略)ちなみにPastis
du Japonもある。ケンくん(2005年1月29日投稿)
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オススメ図書
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プロヴァンス・アルプス・コートダジュール地域圏には、ローヌ川沿岸の「コート・デュ・ローヌ南部Côtes
du Rhône」と、地中海沿岸の「プロヴァンスProvence」の2つの産地がまたがっており、以下の図書では、ワイン的見地からプロヴァンスを知ることができる。
ポケット・ワイン・ブック 第6版
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ヒュー・ジョンソン著 |
早川書房 |
アカデミー・デュ・ヴァン推薦の必携本。
世界中のあらゆるワインがアルファベット順に解説されているワインの辞書。飲み頃ヴィンテージも産地別にあって重宝する。ポケットサイズだから持ち運びに便利。国内海外を問わず、飲む時、買う時いつでもお供に。2005年出版の最新版。英語版もあり |
図説
フランスワイン紀行―知られざる名産地を訪ねて |
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宇田川 悟 (著), 山本 博 |
河出書房新社 ふくろうの本 |
ワイン王国フランスの産地を巡る、いわばワイン的見地の観光情報。二大産地のボルドーとブルゴーニュ以外のマイナーエリアにも平等にページを割いて、多彩なAOCと見所や歴史を説明している。地方に行けばその土地のワインが郷土料理にも気候にも合うから一番美味しいわけで、ワインファンがフランス旅行を計画する時に参考になる。
プロヴァンスにまたがる2つの産地、コート・デュ・ローヌは「南北の対照的な風土が生み出す多彩な味と香り」、プロヴァンスは「フランスワインの起源となった歴史ある栽培地」として紹介されている。 |
ワインが語るフランスの歴史 |
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山本 博 |
白水社 |
ワインは自然と人知の合作物。ワイン王国フランスの歴史には、新世界にはないロマンがつまっている。本書はフランスの歴史にからめて、フランスの12の産地を巡り、主要ワインについて36章を割いて解説。石器時代から現代まで続く歴史を知れば、フランスワインがよりいっそう美味しく楽しく味わえる。
ワイン産地としてのプロヴァンスについては、「ギリシア植民市の誕生 ワイン文化発祥の地マルセイユ」、「聖ジャックの道、銀河 巡礼の道のワイン」、「アヴィニョンの幽囚 教皇の赤ワイン」に加え、「エニシダの復讐 ロワールの城とワイン」でロゼダンジューとタヴェルの比較、「フランスを襲ったブドウのペスト フィロキセラ以前と以降のワイン」でフィロキセラ発見の地としてアルルが紹介されており、ワインとの深いかかわりがわかり、プロヴァンスの旅にもう一つの楽しみが加わる。 |
今日はこのワイン!24のブドウ品種を愉しむ |
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野田 幹子 |
生活新書 |
ワインは原料となるブドウ品種によって個性が違い、それが楽しいのだが、初心者的にはハードル高く感じてしまう。そこで本書では、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネなど代表的なブドウ24種を、産地ごとに色・香り・味わい・相性料理などの特徴を説明。これさえ押さえておけば十分にワインが楽しめるようになっている。
なお、プロヴァンスおよびコートダジュールは、ワインの産地ではローヌ南部とプロヴァンスに相当するのだが、その代表品種として、赤はシラー(オーストラリアでも成功)とグルナッシュ(毎日気軽に楽しみたい)、白はミュスカ(心華やぐ愛らしさ)とマルサンヌ(北ローヌで真価を発揮)と紹介されている。 |
知っておきたい「酒」の世界史
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宮崎 正勝 (著) |
角川ソフィア文庫 |
酒の歴史は人間の歴史。ウォッカ、テキーラ、日本の焼酎など、世界中の全ての蒸留酒は、9世紀にイスラームで錬金術のために発明された「アランビク」からはじまった。メソポタミアからヨーロッパにもたらされた「液体のパン」ビール、ペストの恐怖が育てたウィスキーとブランデー、飲料水代わりだった大航海時代のワイン、冬の寒さが産んだ奇跡の酒シャンパンなど、世界をめぐる多様なお酒の意外な来歴と文化がわかる、おもしろ世界史。バーでのウンチクが増えます。幻の酒アブサンと南仏の酒パスティスの関係も。 |
もっとワインが好きになる―必携Wine好きノート
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花崎 一夫 (著) |
小学館 |
サントリースクール主任講師による、ワインに関する実践知識が満載。
ぶどう品種・栽培条件、製造法、飲み方のポイント、世界の産地(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、アメリカ、オーストラリア、チリなど)と特徴(地域、地形、土壌、気候、ぶどう品種、歴史、主な銘柄・特色)、格付け・ラベルの読み方、おすすめワイン100選など、
この一冊でワインが10倍美味しく楽しめる。 |
太陽の香り―南フランス・ワイン紀行 |
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渋谷 康弘 |
ベストセラーズ |
現役ソムリエが、プロヴァンスを食べ&飲み歩き。
ワイン産地を念頭においているため、サブタイトルが南フランスとなっているが、まさしく丸々プロヴァンス。
前半はアヴィニョンを拠点に、後半はエクスを拠点に、ブドウ畑・ワイナリーやレストランや食材の産地を巡る。さすがソムリエだけあって、レストランのシェフと知り合いで、観光では知り得ない現地の楽しみ方が詰っている。また、ワインの造り手やレストランのシェフとの会話の中で、プロヴァンスの人々の食に対する哲学が分かって面白い。
太陽の恵み。これこそがプロヴァンスの「テロワール」なんだろう。プロヴァンスの滋味を知りたい人は必読。 |
ヨーロッパものしり紀行 くらしとグルメ編
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紅山 雪夫 |
新潮社 |
元旅行代理店のベテラン添乗員が、ヨーロッパのあれこれウンチクを案内する「読む観光本」。より踏み込んだ知識をもてば、他人任せのツアーより、断然ヨーロッパ旅行がイキイキしてくる。
シリーズ第二弾。チーズやワインやレストランなどの食事から城塞や家やローマ遺跡の建築まで、ヨーロッパ旅行で出会う現地の生活文化を幅広く紹介。
プロヴァンス関連としては、ニームのローマ水道橋の建築の秘密、カマルグに住むジプシー(ロマ人)の知られざる生活、香水の都グラースの花精油の製造法などがわかりやすい文章で説明されている。 |

まだまだオススメ本あります→プロヴァンスに関する本
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