管理人のプロヴァンス留学体験談
当サイトの管理人の2人は、同時期に同じ場所に留学していたわけですが、各々どんな生活を送っていたのか一問一答形式で大公開。
もうかなり昔の思い出話となってしまいました。なんせ当時は、ユーロも導入されていませんし、TGV地中海線も開通していませんし、ネットやメールすらありませんでした。
とはいえ、これから留学や長期滞在を考えている方に、少しはお役に立てるかもしれません。
※文中の金額は当時の単位フランで表記しています。
当時は1フラン=約17円くらいだったはず。 |
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1 どこでどれくらいの期間、学んだの?
93年7月〜94年6月まで、エクサンプロヴァンスの、エクス・マルセイユ第3大学附属の外国人向け語学学校
(IEFEE,Institut
d'Etudes Francaises pour Etudiants Etrangers,Universite Aix-Marseille
III)にて。いわゆる私費留学。
この学校では通年のコース(10月〜翌5月)と半年のコース(10〜翌1月、2〜5月)があったが、わたしは通年コースにしたため、10月開始だった。
ギリギリに行くより、せっかくだから早く新しい生活を始めて、その土地に慣れたい思いから、8月末から1ヶ月の夏季講座にも参加してみた。
新年になると、いなくなる人もいれば、新顔も見られた。
勉強が厳しくて落とされるとかではなく、半年コース選択者だろう。
現に、1年の滞在期間のうち、前半をアンジェで過ごし、後半からエクスに来た人もいて、そういう時間の使い方もあるんだなあと、感心した。でもわたしは、同じ場所で1年間を過ごしてみたかったので、エクスから移動するつもりはなかった。
2 留学しようと思った理由は?どうしてその学校を選んだの?
フランス語を小学校から学んでいたのも何かの因縁だろうからいずれはフランスで生活してみたい、大学の授業だけではフランス語の会話力がつかない、クストーゆかりのモナコあたりで海洋学を学びたい、地中海で優雅にヨットスクールに入ってみたい、などなど、お勉強よりも不純な遊び先行型。
まず、知り合いのフランス人教師にいくつかフランス国内の留学先のオススメをリストアップしてもらった。その人はサヴォワ出身だったけど、暖かいところ希望といったら、やっぱ南仏でしょう、と。
高校1年の夏にマントンでホームステイしたこともあって、南仏は比較的になじみのある場所でもあったから、すんなり決定。
3 入学準備は?(出願時期、出願方法、情報源、住居など)
こっちでは、飯田橋の欧明社などで資料集め、入学願書提出、就学ビザの申請・取得くらいだったかなあ。むこうでは、銀行口座の開設、在留許可書(Carte sejour)の申請くらいだっけ。
住む場所は、学校が斡旋してくれるとのことだったので、事前にホームステイか学寮か希望を出しておいて、入学手続きが終わった後に、順次、紹介してくれた。
向こうに到着して学校が始まるまでの1週間が寂しいホテル暮らしだったので、ホームステイのホストファミリーとご対面のときは、涙ちょちょぎれるほど嬉しかった。
最初の半年をホームステイ(街の校外)、残りを友だちとルームシェア(街の中心部)にした。
4 どんな授業だった?(一週間あたりの通学日数、一日あたりの授業時間数、楽しかった授業など)
初心者のdebutant,中級のmoyen,上級のNiveau3の3段階のレベル別のクラス分けになっていて、入学手続き終了後に、筆記テストでレベル判定。日本人は文法には強いこともあって、私はN3になってしまった。(おっと自慢入っちゃった?つっても所詮会話力はカラキシ)
なお、現在では4段階に分かれているようだ。2003年に創立50周年を迎えた学校だけあって、カリキュラムがとてもしっかりしていると思う。校舎もなかなかに素敵。
N1とN2では、さらに細かいクラス分けの上、日本の小学校のように、担任の先生が10名くらいの生徒を受けもって、毎日、文法や会話を中心に、ディスカッションやプレゼンテーションなどをやっていたようだ。
一方、N3では、生徒数は30名弱で、担任の先生はいないも同然。月〜金で大学の講議のように授業に必修と選択がある。「プロヴァンス史」「商業フランス語」「フランス経済」などの授業がなかなか面白くて記憶に残っている。
中でも、この歴史の授業の先生が、週末になると遠足の引率をしてくれて、ローマ水道橋やレボーやフォンヴィエイユなど、プロヴァンスの様々な史跡や名所を案内してくれた上に、他のクラスの人たちとも交流できたので、とても有意義で楽しい時間を過ごせた。
本コースが始まる前の夏季講座では、上記のN1やN2のようなスタイルで、午前中に授業が行われた。内容は文法、読解、歴史、ディスカッションや自国のプレゼンなど。お昼はそのままみんなでオープンカフェに移動して青空授業!このときできた友達が一番仲良くなったかもしれない。夜は予習・復習しないと追いつけなかった。
生徒の国籍は、人数の多い順に、アメリカ人(カリフォルニアの大学の交換プログラムだったらしく、かなりの人数がいた)、ドイツ人、イギリス人、デンマーク人、オランダ人、スウェーデン人、ノルウェー人、台湾人、スイス人、オーストリア人、ギリシア人など。そして日本人は20人くらいはいたかな。イタリア人とスペイン人はいなかった気がする。
年齢層は、通年コースでは各国の大学生がほとんどだったけど、夏期講習ではリタイアしたばかりのイギリスの老夫婦なんかもいて、ヴァラエティに富んでいた。
5 単位交換?証明書はある?日本の大学でどれくらい単位として認めてくれる?
10月からのコースを選んだため、わたしの大学では半期の授業しか単位交換の対象にならないとのことだったので、特に単位交換にはしなかった。きっと交換留学だともう少し融通が利くんじゃないだろうか。つくづく上智の交換留学の掲示板を見落としたことを後悔した。でもまあ、なるようにしかならないや、と。友達ができるにしたがって、留学から遊学に変わってしまった。
この学校では、もちろん単位をきちんと取得した場合、修了証明書として、diplomeあるいはcertificatが発行される。これが単位交換する場合の証明となるわけだ。しかし、どうせ単位交換しないからいいや、と諦めてしまった私。外国人向けとは言え、授業がけっこう高度でハード。毎日予習復習しないと到底ついていけないのだ。侮れない。勉強するヒマがあれば旅行したい!時間が限られている身なんだ!と、わけのわからないダメダメな理由から、修了証明書を諦めちゃったわけです。今となっては留学していた証明となるものもなく、ちゃんと修了証をもらっておけば良かったなあと。後悔先に立たず。
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6 どんな生活だった?(休日の過ごし方、どんな友だちができたか、など)
基本的に、平日の昼間は学校でお勉強。空き時間は学校近くのカフェで友達とおしゃべり&日焼け。夜は友だち宅に集ってフェット(飲み会)ですよ!
休日は地元の草サッカーチームに入れてもらったり、市民プールでぼんやりしたり、学校主催の遠足に参加したり、友だちとコートダジュール方面に汽車旅したり、友だちの別荘に行ったり、アルプスでスキーしたり。
学校でできた友だちは、当然ながらフランス人ではない。授業や遠足で一緒になった、ドイツ人とかデンマーク人とか北欧系にイイ奴が多かった。お互いに初めて話す人種だから、興味があったんだろう。
夏季講座で一緒だったクラスメートはみな帰国しちゃったし(考えてみれば、1年も残る必要がない程、みんなフランス語に堪能だった)、N3は毎日クラス単位での行動があるわけではないため、友だちは作りづらかった。よく顔を合わすなあ程度。その点で、クラスメートと一日行動をともにしているN1とN2が羨ましかった。
学校は政治学部の校舎と隣接しているので、たまにカフェなどで学部生と話す機会もあった。エクスには親日派のフランス人が多くて、そういった人たちとの交流会が定期的にあって、そこでフランス人の友だちができた。
中でも一番仲良くしてもらったのは、文学部の学生のルドとディディエ。で、彼の仲間の集まりに入れてもらってから、友だちがたくさんできた。それからは一緒に飲みに行ったり、旅行に連れて行ってもらったり。その回数に比例して、フランス語力は格段にアップしたと思う。彼らとは今でもフランスに行くときは連絡をとるし、また、うち数人は日本に留学や長期滞在しにくるほど、親しくなれたのがうれしい。
あと、日本人では、絵描きの卵のヤスと写真家の卵のタカととても仲良くなることができた。彼らはフランス語のフの字もできないのに、セザンヌやアルルの写真祭に憧れて、エクスに飛び込んできたわけだ。心配する間もなく、あっという間にフランス語を身につけてしまったのには舌を巻いた。モチベーションが違うんだなあ。
そうそう、日本人の小社会なんかもできていた。あんまりどっぷり浸かるのはよそうと思ったけど、かといって、全く交流をさけるのもなんなので、程々におつき合いしてもらった。様々な情報も入手できるし、日本食や日本語に恋しくなるときもあるし。いまだに連絡を取り合っている人たちもいるようだ。特に女性では、向こうの人と結婚してそのまま永久就職ってパターンなんかもあった。年齢は18〜30代くらいかな。学生だけでなく、OLを辞めてきた人やアフリカ転勤前の商社マンや研修中の外交官なんかもいた。
7 生活費はいくらかかる?
家賃はホームステイが月3000フラン(朝夕飯付)で、ルームシェアだと一人2100フラン(光熱費込み)。
金額的にいってもホームステイがお得。ホストファミリーと嫌でもフランス語で会話しなければならないし、テレビも見れるから、フランス語の上達にもかなり役立つ。
ただ、ホストファミリーに当たり外れがあるようだから、一概に良いとも言えないものらしい(これはフタを開けてみないとわからない)。
その点、私はホストファミリーに恵まれたと思う。生っ粋のプロヴァンスっ子のおばあちゃんの、プロヴァンス風のお宅で、ハーブふんだんのプロヴァンス料理を堪能できたり、プロヴァンス的な生活が満喫できたから。
一点だけ、街から徒歩30分の坂道で門限も厳しかったのが難点。友だちができるようになると街中で一人暮らしを始めたい気持ちが大きくなり、学寮に入っていた友だちと意気投合して、ルームシェアをすることにした。ルームシェアなら、一人暮らしの家賃(1800F前後)で比較的立地も良い場所に広い部屋が借りることができるし。
食費は、ホームステイの時はお昼のみ。ピザスタンドでピザとか、カフェでサラダ・ニソワーズなど、30Fもあれば、かなり贅沢できた。
夜は、ホストファミリーのおばあちゃんがかなりのプロヴァンス料理の達人で、毎晩美味しく楽しい食卓だった。
ルームシェアでは、自炊しなければならなかったので、当然、食費がかかった。ルームメイトと共同食費財布を作って、食材を買いに行って料理をする当番制にした。
あとは友だちの家に食事をたかりに行くこともしばしば。もちろん、片手にはワインかビールをお土産に。
通信費は、当時はインターネットやメールなんかはなかったから、ひたすら日本とは文通。ハガキは1枚5Fで、切手代は1通4F70。文通は原始的な手段かもしれないが、あったかみがある上、素直に本心も書ける。返事を待つのがかなり焦がれる想いだったが、それがまたいい。旅先で絵葉書を探すのも楽しみとなったものだ。
ケータイもなかったし、街自体もそんな広くなかったこともあって、電話する機会は公衆電話から実家との国際電話くらい。あまり長電話はしなかったが、留学させてもらっている以上、親を不安にさせないことが義務ってことで、割と頻繁に。テレカルト(テレフォンカード)が100度数で1枚100F。
あとは、日本では入手できないような本や写真集を買ったり、たまに服買ったり、これはあまり日本と物価は変わらない。旅費が一番高かったかな。何しろ、このために食費は切り詰めた。外食なんてほとんどしなかった。
住居探しのポイント |
長所 |
短所 |
一人暮らし |
自分のペースで生活することができる |
引きこもりになる可能性も |
ルームシェア |
一人暮らしの家賃で、立地も良く広い部屋が借りれる |
ルームメイトとの共同生活のため、衝突もある |
ホームステイ |
ホストファミリーとの会話、テレビなど学校以外でのフランス語力を磨ける |
ホストファミリーとの相性のよしあしがある |
学生寮 |
家賃が最も安い(1200F程度) |
シャワーやトイレが共同、門限をどう捉えるか |
8 留学中、どこか旅行した?
フランス国外というと、留学中に仲良くなったデンマーク人の実家に遊びにいく予定だったけど、運悪くというか不注意というべきか、直前のフランス国内旅行中にパスポート紛失もしくは盗難で、断念。残念無念。あとは日本帰国直前にいとこの入るミラノに寄ったくらいかな。
それよりも、せっかく南仏にいるんだから、プロヴァンスの色々な街を中心に、ひたすらフランス国内を旅行してみた(プロヴァンス、コートダジュールはもちろん、ブルゴーニュ地方、ラングドック地方、ペリゴール地方、コルシカ島、アルプスなど)。
両親が遊びに来た時は、レンタカーを借りて、パリまで4泊くらいかけて、ゴーミヨーを参考にシャトー&レストランの旅をしたのも楽しかった想い出。
9 留学してよかったこと、わるかったこと
良かったことしかない。まず、日本に伝わってこないフランスを直接見聞できて、肌で感じることができたのは大きい。
さらに、地方色が濃い土地で生活することで、フランスはパリだけじゃないこともわかった。
もう1つ、日本のことをもっと良く知る必要があることに気付いた。クラスメートから日本に対する様々な質問を受けるにつけ、自分は母国をあまり良く理解していないことを痛感して、恥ずかしくなった。自分の国のことがわかってから、他の国を学ぶべきじゃないかとさえ思った。つーわけで、帰国してからこの10年と言うもの、かなり右寄り。
10 これから挑戦するヒトに一言
語学のためだけの留学は面白くない。どうせ1年まとまった時間があるのなら、たとえば、絵とか料理とか、
語学以外に目的を決めて行った方がイイ。結局、言葉ができないとそれらのことを学べないから、必死で言葉を覚えることになるし、日々の生活も充実したものになると思う。
留学する場所として、エクスはかなりオススメ。街並はきれいで落ち着いている上に、
もともと学生の街(市内にエクス・マルセイユ大学の政治学部と法・経済・理工学部、プロヴァンス大学がある)だから若い活気にあふれていて、日本びいきの人も多く、友だちも作りやすい。街の中心部はこじんまりしていて美しく、マルセイユに比べて治安も良いし。交通の便もよく、旅行に便利。長距離バスを利用すればプロヴァンスやコートダジュールの主要都市にもアクセスしやすいし、今じゃTGV地中海線も開通してより便利になったはず。強いて言うなら、海があれば言うことなし。
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世界中の留学生を結ぶコミュニティーサイト「留学生.net」
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日仏文化協会>フランス長期留学
EduFrance
Japan フランス政府留学局
在マルセイユ日本総領事館>南仏の安全対策マニュアル
プロヴァンス 碧い海と碧い空と… |
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田辺 保 |
恒星出版 |
大阪市立大学名誉教授の著者が、前半部分では「ローマ時代」「キリスト教伝来」「中世」といった歴史や、後半部分では「ペトラルカ」「ミストラル」「ドーデ」「パニョル」「ジオノ」といった文学者などを通して、プロヴァンスの魅力を丁寧に紹介。
プロヴァンスの入門書として最適。旅行ガイドの次に買うならこれ。リピーターや留学生は必携。
ちなみに、イラストを担当した娘さんの作品は、Keiko
Tanabe Web Siteに続々発表されている。 |
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