プロヴァンスに関する本
1990年代の「プロヴァンスの12ヶ月」の世界的なブーム以来、南フランスは確実に日本人にとって身近な外国になりました。プロヴァンスに関する書籍が増えましたし、ファッション雑誌などでのプロヴァンス特集も増え、プロヴァンス・ファンにとっては非常に嬉しい限りです。
そこで、日本で入手できるプロヴァンス関連のオススメ本をピックアップしてみました。写真を見たり文章を読んだりするだけで、プロヴァンス気分に浸れます。また、現地に行ったら、想い出に写真集を購入することをお薦めします。荷物になるかもしれませんが、日本では高価の上、なかなか入手できませんから。
▼ジャンル別
観光(総合)|観光(テーマ別)|紀行エッセイ|歴史|写真集|文学・小説|アート|植物|ワイン|紋章|プロヴァンス語|キリスト教
観光ガイドブック(総合)
地球の歩き方 南仏プロヴァンスとコート・ダジュール&モナコ |
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「地球の歩き方」編集室 |
ダイヤモンド社 |
旅の定番。フランス全国版もあるが、本書はプロヴァンスに特化しているだけあって、地図、見所など深く突っ込んだ情報がうれしい。読者からの投稿もあり、現地情報に事欠かない。
とりあえず抑えておきたい街はたいてい載っている上に、ハンディーサイズで持ち運びやすいため、いつまでたっても手放せない一冊で、何度お世話になったことかわからない。
初心者からリピーターまでを満足させる情報が満載だが、ゴージャスなヴァカンスというより、庶民的な旅に向いているかもしれない |
Michelin
Provence, Cote D'Azur |
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Michelin |
Michelin Travel Pubns |
ミシュランによる、プロヴァンスとコートダジュールのロードマップ。車の旅には必携。
20万分の1スケール(1cm=2km)で、高速autoroute、と国道route nationale、県道が網羅されている。主要都市(エクス、アルル、アヴィニョン、カンヌ、マルセイユ、モナコ、ニース、トゥーロン)の地図や道程表(都市間の距離・所要時間)もついていて、旅行計画にも便利。現地では、高速のサービスエリアやガソリンスタンドでも手に入る。 |
もっと知りたい 南仏プロヴァンスQ&A100 |
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電通映像事業局編 |
亜紀書房 |
「ローマ時代に発達した有名な都市は」「アルルはゴッホにとってどんな場所だったのでしょうか」「プロヴァンス料理の特色をあげてください」「ラヴェンダー街道を紹介してください」「長い期間、プロヴァンスに滞在するにはどうしたらいいですか」といった、一問一答形式で、プロヴァンス事情を様々な角度から伝える。 |
フィガロ ヴォヤージュ 【永久保存版!】プロヴァンスとコートダジュールへ。 (ムック) |
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阪急コミュニケーションズ |
「南フランスの幸せヴァカンス プロヴァンスとコートダジュールへ。」
〔プロヴァンス〕
●リル・シュル・ラ・ソルグ…運河沿いで楽しむ、食と日曜日の骨董市。
●レ・ボー・ドゥ・プロヴァンス…滋味を愛する人の手が育んだ、ブドウ畑に陽が降り注ぐ。
〔コートダジュール〕
●マントン…陽気な町を彩る、甘いレモンの魔法。
●サンポール・ドゥ・ヴァンス…中世の面影を残した村はひとつの芸術作品。
など、メジャーどころ以外の街にも行きたくなる、フィガロらしい洒落た一冊。 |
フランスの旅 8 (エイムック 1802) [大型本] |
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エイ出版社 |
総力特集 何度行っても憧れの南仏。プロヴァンス&コート・ダジュール
何度訪ねても色あせない光の楽園。心のふるさと、南仏の旅へ。
●南仏から旅する異国。モナコ、そして北イタリアへ
●ワインジャーナリスト柳忠之さんと巡るブルゴーニュ・ワイン街道
●どんどん歩き回りたいパリ3区・4区マレ探訪
●特別付録 眺めて楽しい!フランス・イラストMAP
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観光ガイドブック(テーマ別)
ヨーロッパ花めぐり
(2005-06) 地球の歩き方MOOK |
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ダイヤモンド・ビッグ社 |
もっとも美しく華やかな花咲く季節のヨーロッパ10カ国。真っ先に「色と光に華やぐ南フランスへの旅」としてプロヴァンスが紹介されている。
<もくじ>ラヴェンダー街道を巡るリュベロン地方、画家が愛した花の風景アルルとエクス・アン・プロヴァンス、プロヴァンス旅行にピッタリな花のホテル、香りと芸術を堪能するコートダジュール、コートダジュール旅行にピッタリな花のホテル
<コラム> リュベロンへの旅でラベンダーに親しもう、南フランスでしゃれたおみやげを見つけよう!、南フランスのスイーツが織り成す甘美な世界
余談ながら、2005年夏の旅では、本書でエクスの宿を見つけた。 |
ヨーロッパ建築案内〈1〉
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淵上 正幸 (著), ギャラリー間 (編集) |
TOTO出版 |
ヨーロッパの現代建築(1970年以降)ガイドブック。全3巻(南欧、中欧、北欧・東欧・英)。一度は訪れたい有名建築、知っておきたい隠れた名建築までを圧倒的なボリュームで徹底解説。一つの建築に1ページを割き、テキストに加えて4枚の写真を配し、読んでも眺めても楽しく仕上がっている。
第1巻の本書では、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、マルタを都市ごとに扱っている。プロヴァンスからはブシュ・デュ・ローヌ県庁舎(マルセイユ)、マルセイユ国際空港(マルセイユ)、アルル考古学博物館(アルル)、アルベール・カミュ高等学校(フレジュス)が紹介されている。 |
世界の建築・街並みガイド〈1〉フランス・スペイン・ポルトガル
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羽生 修二 (編集), 西山 マルセーロ (編集), 入江 正之
(編集) |
エクスナレッジ |
古代から現代までの重要な建築や街並みなど見所が満載。ガイドブックとは違った専門家による視点で、写真一枚とともに簡潔な説明がされている。所在地が地図で示してあるのもうれしい。
プロヴァンスからは、オランジュの古代劇場、セナンク修道院、アヴィニョンの法王庁宮殿、アヴィニョン橋(サン・ベネゼ橋)、ヴィルヌーヴ・レ・ザヴィニョン修道院、ニームの古代劇場、メゾン・カレ、カレ・ダール、ネモージュス1集合住宅、ポン・デュ・ガール、エグ・モルトの城壁、アルルの古代劇場・円形闘技場、サン・トロフィーム教会堂、マルセイユのユニテ、シルヴァカンヌ修道院、ル・トロネ修道院、カップ・マルタンの休暇小屋、サン・ヴェランの街並みが取り上げられていて、行ったことがある場所に撃沈マークをつけるのも一興だ。
また、「テーマのある旅」というコラムが、さらに深く掘り下げられていてとても面白い。
プロヴァンスからは、「プロヴァンスのシトー会修道院を訪ねる」「巡礼路の聖堂と装飾を訪ねる」「ル・コルビジュエの生涯をたどる旅」
が取り上げられていて、次回のプロヴァンス旅行のヒントになる。 |
ル・コルビュジエを歩こう―現存36作品完全ガイド-フランス編
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吉野 弘 (著) |
エクスナレッジ |
友達がマルセイユのユニテ・ダビタシオンに住んでいて、初めて知ったル・コルビュジエの名前。プロヴァンスには4つの作品(マルセイユ、ラ・サントボーム、トゥーロン郊外、カップ・マルタン)と彼の墓が残されている。
本書は、偉大な近代建築家ル・コルビュジエの、フランス国内に残る全ての遺産を旅するためのガイドブック。前半は写真とともに住所とアクセス方法まで載っていて親切。後半は作品自体にスポットを当てて、スケッチとともに詳しく解説されている。文庫本サイズで持ち歩きにも便利。この本にル・コルビュジエの全てが丸ごと詰まっていて、足跡をたどるのにもってこい。 |
フランス世界遺産の旅 Voyage
du patrimoine mondial de France |
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山田 和子 |
小学館 |
美しい写真と詳しい文章で、フランス世界遺産全28か所を巡る旅行ガイド。主要地図・アクセス情報入り。
南フランスに関しては「古代ローマの遺跡が数多く、中世ロマネスク様式、ゴシック様式の聖堂も多い」と紹介され、プロヴァンスでは「オランジュのローマ劇場と凱旋門」「アヴィニョン歴史地区」「アルルのローマ遺跡とロマネスク洋式建築群」「ローマ水道橋」および「サンティアゴ・コンポステーラの巡礼道・トゥールーズの道」が記載されている |
地球の歩き方 フランス鉄道の旅 Travelling
by Train France |
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「地球の歩き方」編集室 |
ダイヤモンド社 |
地球の歩き方による新シリーズは「車窓から」。地続きのヨーロッパ諸国の旅行の移動に鉄道は有効な手段。
プロヴァンスに関しては、TGV地中海線はもちろん、「プロヴァンス鉄道」「アルピーユ鉄道」「タンド線」といった景勝ルートのローカル線に関する記述もあって、鉄道旅行の魅力にあふれている。トーマスクックの時刻表とともに読むと想像が膨らむ |
プロヴァンス
歴史と印象派の旅 |
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牟田口 義郎、佐々木 綾子、佐々木 三雄 |
新潮社 とんぼの本 |
タイトル通り、第一章がプロヴァンス各都市の歴史(オランジュ、アヴィニョン、ポン・デュ・ガール、ニーム、エーグ・モルト、グロー・デュ・ロワ、サント・マリー、アルル、レ・ボー、サン・レミ、エクス、マルセイユ、コート・ダジュール)、第二章が印象派の足跡(アヴィニョン、アルル、サン・レミ、モンペリエ、マルセイユ、エクス、サン・トロペ、カネ、ヴァロリス、アンティーブ、ビオット、カーニュ、サン・ポール、ヴァンス、ニース、ヴィルフランシュ、マントン、ボルディゲラ)を追う旅になっていて、写真は少々古く感じるが、文章が読みものとして興味深くとてもためになり、プロヴァンス旅行が待ち遠しくなる。 |
図説
フランスワイン紀行―知られざる名産地を訪ねて |
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宇田川 悟 (著), 山本 博 |
河出書房新社 ふくろうの本 |
ワイン王国フランスの産地を巡る、いわばワイン的見地の観光情報。二大産地のボルドーとブルゴーニュ以外のマイナーエリアにも平等にページを割いて、多彩なAOCと見所や歴史を説明している。地方に行けばその土地のワインが郷土料理にも気候にも合うから一番美味しいわけで、ワインファンがフランス旅行を計画する時に参考になる。
プロヴァンスにまたがる2つの産地、コート・デュ・ローヌは「南北の対照的な風土が生み出す多彩な味と香り」、プロヴァンスは「フランスワインの起源となった歴史ある栽培地」として紹介されている。 |
世界・美術の旅ガイド 南フランス プロヴァンスとコート・ダジュールの美術館と画家たち |
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キークリエイション |
美術出版社 |
ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、ルノワール、マティス、シャガールといった、南フランスを愛した芸術家たちの足跡をたどりながら、個性的な美術館・博物館めぐりをするのにもってこいの一冊。きれいな写真が豊富。表裏のどちらからも読むことができ、表からは美術館情報や地域ガイド・旅情報、裏からは南フランスを愛した芸術家たち、となっている。 |
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紀行エッセイ
プロヴァンス 碧い海と碧い空と… |
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田辺 保 |
恒星出版 |
大阪市立大学名誉教授の著者が、前半部分ではローマ時代、キリスト教伝来、中世といった歴史や、後半部分ではペトラルカ、ミストラル、ドーデ、パニョル、ジオノといった文学者などを通して、プロヴァンスの魅力を丁寧に紹介。
プロヴァンスの入門書として最適。旅行ガイドの次に買うならこれ。リピーターや留学生は必携。
ちなみに、イラストを担当した娘さんの作品は、Keiko
Tanabe Web Siteに続々発表されている。 |
地中海歴史回廊 |
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牟田口 義郎 |
ちくま学芸文庫 |
ヨーロッパ、アフリカ、アジアの三大陸に囲まれた地中海は、人類の歴史そのもの。本著は、中近東現代史・地中海文化史の大家の、半世紀に及ぶ体験を集めた歴史エッセー。イベリア、マグレブ、イタリア、ギリシア、トルコ、シリア、エジプトとともに、プロヴァンスについても50ページほど割かれている。
マルセイユの由来、「第二のイタリア」と呼ばれたローマ時代、中世とプロヴァンス伯、オランジュとオランダの関係、北欧人が作ったコートダジュールなどの歴史エピソードが詳しくも読みやすく凝縮されている。 |
南仏プロヴァンスのハーブたち |
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広田せい子(文)、広田尚敬(写真) |
文化出版局 |
ハーブと言えばプロヴァンス。プロヴァンスと言えばハーブ。
ティユール(菩提樹)の騎士号を持つハーブ研究家の著者が、「プロヴァンスのハーブ辞典」「ハーブ市場巡り」「ハーブを使ったプロヴァンス料理」「プロヴァンスでのファームステイの話」「ハーブティー」「ハーブ治療」「ハーブのある風景」など、ハーブの故郷プロヴァンスの日常の魅力を存分に紹介。ハーブのある風景が満載で、今すぐにでも飛んでいきたくなってしまう。 |
わたしのラベンダー物語 |
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富田 忠雄 |
新潮文庫 |
北海道・富良野の「ファーム富田」の農場主による、ラヴェンダーの歴史や栽培方法、楽しみ方の解説。もちろん、ラヴェンダーの故郷プロヴァンスへ旅行していて、グラースの香料会社やオート・プロヴァンスのラヴェンダー栽培事情が紹介されている。ちなみに著者はその功績が讃えられて同地のラヴェンダー修道騎士となった。その叙位式のエピソードも収録されていて、なかなか貴重だ。 |
太陽の香り―南フランス・ワイン紀行 |
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渋谷 康弘 |
ベストセラーズ |
現役ソムリエの著者が、美食大国プロヴァンスを食べ&飲み歩き。
ワイン産地を念頭においているため、サブタイトルが南フランスとなっているが、内容はほぼ100%プロヴァンス。前半はアヴィニョンを拠点に、後半はエクスを拠点に、ブドウ畑・ワイナリーやレストランや食材の産地を巡る。さすがソムリエだけあって、レストランのシェフと知り合いで、観光では知り得ない現地の楽しみ方が詰っている。また、ワインの造り手やレストランのシェフとの会話の中で、プロヴァンスの人々の食に対する哲学が分かって面白い。
太陽の恵み。これこそがプロヴァンスの「テロワール」なんだろう。プロヴァンスの滋味を知りたい人は必読。 |
ヨーロッパものしり紀行 くらしとグルメ編
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紅山 雪夫 |
新潮社 |
元旅行代理店のベテラン添乗員が、ヨーロッパのあれこれウンチクを案内する「読む観光本」。より踏み込んだ知識をもてば、他人任せのツアーより、断然ヨーロッパ旅行がイキイキしてくる。
シリーズ第二弾。
チーズやワインやレストランなどの食事から城塞や家やローマ遺跡の建築まで、ヨーロッパ旅行で出会う現地の生活文化を幅広く紹介。
プロヴァンス関連としては、ニームのローマ水道橋の建築の秘密、カマルグに住むジプシー(ロマ人)の知られざる生活、香水の都グラースの花精油の製造法などがわかりやすい文章で説明されている。 |
深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン |
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沢木 耕太郎 |
新潮社 |
ユーラシア大陸横断放浪紀行の最終巻。
イタリアからスペインに渡る途中、ニース、モナコ、マルセイユに立寄るシーンがチラッと出てくる。人々との交流やモナコのカジノでの苦い経験など、淡々と綴られるエピソードに、そうそう貧乏旅行ってこうだよね〜と共感を覚え、旅愁を誘う。 |
歴史
30ポイントで読み解く「ローマ帝国衰亡史」 |
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金森 誠也(監修) |
PHP文庫 |
1776年に発刊されたE.ギボンの歴史的名著が手に取るようにわかる。属州だったプロヴァンスを知る上で、特にガリアを征服したカエサル辺りのローマの事情は押さえておきたい |
カエサルを撃て |
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佐藤 賢一 |
中公文庫 |
時はBC58〜52年。古代ローマが「アルプスの向こうのガリア」を併呑したアレシアの戦いまでを描く。ローマ帝国の支配からガリアを解放するために、乱立するガリア部族を束ねて立ち上がった若きカリスマ、ヴェルキンジェトリクス。
対するは、ガリア総督カエサル。コンプレックスや嫉妬を持った冴えない中年オヤジとして描かれている。本書はいわば敗者の視点による「ガリア戦記」だが、ガリア(フランスの古名)がローマ化される前の時代、フランス人の永遠のヒーローを描いた日本語による歴史小説は貴重。なお、映画「グレート・ウォーリアーズ」もヴェルキンジェトリクスを主人公にしている。なお、プロヴァンスはこれより先にローマの属州(プロウィンキア)となっている。 |
ケルト文明とローマ帝国 ガリア戦記の舞台 |
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フランソワーズ・ベック&エレーヌ・シュー (著)、遠藤ゆかり
(翻訳)、鶴岡真弓 (監修) |
創元社 |
フランス地中海沿岸一帯は、イタリア半島とイベリア半島を結ぶ重要な回廊「ヒスパニアの通り道」として、カエサルのガリア侵攻よりずっと前からローマの支配下にあった。だから、現在のプロヴァンスにはアヴィニョン、アルル、エクス、マルセイユなど多数のローマ遺跡が残されているし、プロヴァンスと言う名前自体にも名残りを見せるほどに、ローマ色がひときわ濃く、日常の中に溶け込んでいる。
本書はこのローマ化されたガリア、ガロ・ロマンGALLO-ROMAIN文化をたっぷり堪能できる。プロヴァンス旅行前にガロ・ロマンの基礎知識を詰め込んでおくのにもってこいの一冊。 |
ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉
ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉 |
塩野七生 |
新潮文庫 |
400年に及びパクス・ロマーナ(ローマの平和)を支えた社会の基礎設備。「インフラの父」とも呼ばれるローマ人の偉業の代表格ともいうべき、街道・橋・上下水道を徹底検証。豊富な写真や地図・イラストがうれしい。
プロヴァンスでは、ローマ遺跡が見所の1つだ。イタリア半島とイベリア半島を結ぶローマの重要な属州(プロヴィンキア・ナルボネンシス)として早くから栄えた南フランス地中海沿岸には、ドミティア街道(ローマ・ジェノヴア間の大動脈アウエリア街道の延長)が横断し、アルルには闘技場や劇場、ニームに水を運んだ水道橋、エクスやアルルに共同浴場などの遺跡が現存し、世界遺産にも指定されている。それらは全て「世界の首都」ローマをモデルにして作られた。いつでもどこでもローマ式。その点で、「すべての道はローマから発す」と言った方が、そのスゴさを理解しやすいかもしれない。 |
オクシタニア(上・下) |
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佐藤 賢一 |
集英社 |
時は13世紀。フランス史上の重大事件の1つ、アルビジョワ十字軍。
ローマ教皇とフランス北部諸侯の聖俗が、異端カタリ派の地・オクシタニア(オック語圏、現南仏・ラングドック地方)に牙をむく。教科書上では、これにより、パリ伯に過ぎなかったフランス王家が、領地や影響力を飛躍的に拡大したことになっている。
フランスに併呑される前だから、南仏はオクシタニア(オック語を話す地域)と呼ばれていて、地名をオック語読みにしたり、アルビジョワ十字軍総大将シモン・ドゥ・モンフォールやフランス王ルイ9世(後の聖王ルイ)らフランス勢には標準語を、無冠の帝王トロサ伯(フランス語でトゥールーズ)ラモン7世らオクシタニア勢には関西弁を使わせたりして、両者の違いを際立たせている。また、日本では馴染みの薄い異端カタリ派であるが、悲恋物語を通じて、キリスト教の「正統」カトリックと「異端」カタリ派の信仰の違いも理解できる。
プロヴァンスから見れば、主戦地はローヌ河の向こう側ではあるが、トロサ伯がプロヴェンサ(フランス語でプロヴァンス)侯を兼ねていたため、あながち無関係な事件ではない。 |
聖灰の暗号(上・下) |
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帚木 蓬生 |
新潮文庫 |
こちらもアルビジョワ十字軍を題材。一応、タイトルにあるように暗号探しの歴史ミステリ的な形をとってはいるが(聖杯でなく聖灰としているのがミソ)、特筆すべきは、異端審問官の通訳をつとめたドミニコ派修道士(カトリックの大司教はラテン語、カタリ派はオック語のため)が後世に託した書簡という形で、カタリ派の考えや行動が明らかになっていく点であろう(しかも100頁にわたって)。同時にそれはカトリックにとって隠し通したい過去ともいえる。
作者はフランス史、カトリック史にも詳しく、13世紀当時の国境線や勢力図、ドミニコ会やシトー会の果たした役割なども理解できる。教皇がアビニョンに移ったのも、あるいは南仏・北伊ににらみを利かせるためだったのかもしれない。 |
世界歴史の旅 フランス・ロマネスク |
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饗庭 孝男 |
山川出版社 |
豊富な写真と明快な説明で10〜12世紀の中世ヨーロッパの歴史とロマネスクに関する理解が深まるとともに、フランス各地のロマネスク教会が紹介されている。プロヴァンス地方においては、「サン・トロフィーム大聖堂」「サン・ジル・デュ・ガール教会」「モンマジュール修道院」「ル・トロネ修道院」「シルヴァカンヌ修道院」「セナンク修道院」などが詳しく紹介されている |
南フランスミステリー紀行 |
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桐生 操 |
トラベルジャーナル |
南仏幻想の旅。題名に反してプロヴァンス限定ではないが、「鉄仮面」や「ノストラダムス」や「グレース・ケリー」など人物に関することから、「ブイヤベース」や「ソレイアード」や「グラースの香料」など特産物まで、プロヴァンスやコートダジュールに関する記載が多い |
世界を揺るがした悪党たち |
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桐生 操 |
徳間文庫 |
世界史上、悪名高い人物たち。
プロヴァンスに領地を持ち、マルセイユでも活躍?したサド侯爵も名を連ねる。 |
写真集
Jacques
Cousteau the Ocean World |
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Jacques Ives Cousteau |
Abradale/Abrams |
7つの海を探検・調査した「海の恋人」クストーによる、海中写真集。1953年、著書「沈黙の世界」がベストセラー。1956年、同名映画で未知なる海中世界を初めて世界に紹介し、カンヌ映画祭グランプリとアカデミー賞をW受賞。ちなみにアクアラングは彼の開発によるもので、ダイビングをやっている人は彼に感謝。モナコ海洋博物館・水族館の館長も勤めた。 |
南仏プチホテルの旅 プロヴァンス編 |
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浅岡 敬史 |
東京書籍 |
目と舌の贅沢、心を遊ばせる南仏夢見巡り。セザンヌの描いた山,修道院を改装した憩いの宿,プロヴァンヌ料理の偉大な父,楽しい風呂から巨大な水道橋へ,農家民宿ほか,偉大なる田舎の魅力いっぱいの特選の宿9選。
「偉大なる田舎」プロヴァンスの、マルセイユ、エクサン・プロヴァンス、レボー、アルル、アヴィニョン、ポン・デュ・ガールなどの、旅籠ホテルでのゆったり滞在記。巻末にはジット・ド・フランス(民宿)の紹介やホテルの予約方法も。 |
南仏プチホテルの旅 コートダジュール編 |
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浅岡 敬史 |
東京書籍 |
絶壁から見下ろす地中海,香水の町,サルトルの愛した部屋,陶器の村とピカソ,タラソテラピーなど,青い楽園コート・ダジュールのリゾート気分が満喫できる特選の宿10選。
「紺碧の楽園」コートダジュールの、サン・ジャン・カップ・フェラ、ヴィルフランシュ・シュル・メール、ヴァンス、モンテカルロ、ムージャン、ヴァロリスなどの、瀟洒なホテルでのしっとり滞在記。写真も美しい。タラソテラピー(海洋療法)の体験記も。 |
南仏プロヴァンスのインテリア―メゾン・ドットを訪ねて |
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景山正夫(写真)、後藤絢子(取材) |
トーソー出版 |
ハイセンスなインテリアが自慢のプロヴァンス(アヴィニョン・リュベロン)民宿を9軒、本邦初公開。明るい陽射しがインテリアや風景に陰影を刻む様が美しい写真集。メゾンドットとは、日本語訳すると民宿なんだけど、ちょっとニュアンスが違う。瀟洒な個人宅にお邪魔する感覚。いわゆるプロヴァンス全開のインテリアではないが、古民家を買い取り、インテリアや庭を自分たちで手がけたオーナーたちの思いがこめられていて、ライフスタイルそのものを見るよう。古い物や手作りのものを取り入れる感覚や色遣いのセンスは、なかなか真似できないが、見ているだけでワクワクすると同時にリラックスできる。巻末には、収録されたメゾンドットの連絡先などの情報が記載されているのがうれしい。割安の上に、ちょっとしたホームステイ気分が味わえ、ホテルとは一味違った滞在も一興だ。 |
ドラがみつけたプロヴァンスの家 |
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ドラ・トーザン
(著) |
ギャップジャパン |
NHKフランス語講座や数々の著書で活躍中の著者。生っ粋のパリっ子ってことになってるけど、本書では親戚が代々住んでいるコートダジュールとプロヴァンスをクローズアップ。フランス人ならではの視点で、一歩踏み込んだ取材が新鮮だ。伝統的な家からイマドキな家まで、どれ1つとして同じものがない。十人十色のライフスタイルが、生活空間やインテリアにも見事に現れていて楽しい。ユニークなテキスト+写真集。 |
南仏プロヴァンスの家庭料理ノート |
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パトリス・ジュリアン |
講談社 |
来日20年のパトリス・ジュリアンによるガストロノミー本。ハーブやオリーブオイルをふんだんに使った、自然派でヘルシーなプロヴァンスの家庭料理を紹介。いわゆるオシャレなフレンチではないけれど、料理・ソース・デザートも含めて約60品ものレシピが四季ごとにランチ・夕食別に載っているのが親切。シェーブルチーズのマリネやぺルノー入りフルーツサラダなど、料理素人の自分でもトライしてみようかなと思わせてくれる手軽なレシピがうれしい。実際のところ、味は現地に行ってみないとわからないものだが、盛り付けはホームパーティーの参考にもなるし、インテリアなどは写真集としても楽しい一冊。さらにエッセイはよりプロヴァンスの日常を知ることが出来る。もう10年以上前の本とはいえ、伝統料理ばかりだからまったく色あせていない。 |
プロバンススタイル |
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アンゲリカ・タッシェン |
タッシェン |
風景やインテリアなど、典型的なプロバンスの生活を生き生きと映し出したスタイルブック。
お手頃なサイズ、お手頃な値段。 |
光あふれる南仏の海の家、山の家 |
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エディシォンドゥパリ |
地中海の海と空に囲まれた自然豊かな美しい南フランス。陽光きらめく南仏の素敵な田舎の家へようこそ。 |
プロヴァンスの庭と花
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エディシォンドゥパリ |
ガーデニング本というより、花や緑のあるプロヴァンス風の暮らしのヒントに |
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文学
プロヴァンスの少女・ミレイユ Mireio |
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フレデリック・ミストラル(著)、杉 冨士雄 (翻訳) |
岩波文庫 |
著者ミストラルはプロヴァンス文化保存運動の提唱者で、プロヴァンス語による叙事詩の本作(1858年)で、1904年にノーベル文学賞を受賞し、地方文化の大切さを世に浸透させた。プロヴァンス民俗資料をコレクションし、ノーベル賞の賞金で完成させたアルルのアルラタン民族博物館にて、それらを展示・公開している。ちなみに、ミストラルはプロヴァンスの強烈な北風ミストラルと同じ名前であることに戸惑っていたらしい。 |
風車小屋だより Lettres
de mon moulin |
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アルフォンス・ドーデ(著)、辻 昶(訳) |
国土社 |
19世紀の自然主義派作家ドーデは、フォンヴィエイユに風車小屋を買い、ときどきパリから訪れては詩作をしていた。本書は、風車小屋とその周辺を舞台とする短いエッセイや小説をまとめた短編集にして、彼の代表作(1866年)。ビゼーのオペラ「アルルの女」の原典もここにあり、「詩人ミストラル」に関する描写もある。また、プロヴァンスを舞台にした3部作「タラスコンのタルタラン」がフランスで成功を収め、日本では普仏戦争を題材にした「最後の授業」が有名。 |
ファーブルの昆虫記 Souvenirs
entomologiques |
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ジャン=アンリ・ファーブル(著)、大岡 信(訳) |
岩波少年文庫 |
プロヴァンスの偉大な博物学者ファーブルによる、全10巻に及ぶ自然の中の詩情豊かな文学(1910年)。日本では「シートン動物記」と並び児童書としておなじみで、世界中に昆虫ファンを生み出した(が、母国フランスではあまり知られていない)。「フンコロガシ」や「セミ」など、大人になった今でも読み返すとなかなか面白く、新たな発見があってうれしい。ミストラルとともにプロヴァンス文化保存運動の推進者だった著者は、プロヴァンス語で詩や歌を残している。原文で読んでみたい。 |
木を植えた男 L'homme
qui plantait des arbres. |
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ジャン・ジオノ(原作)、フレデリック・バック(絵) |
あすなろ書房 |
ひたすらどんぐりを植え続け、プロヴァンスの荒地に緑をよみがえらせた老羊飼いの童話風短編。同名の短編アニメ映画が1987年アカデミー賞短編映画賞受賞して、原作者ジオノの作品として世に認知された。パステル画のような美しく優しいタッチで幻想的な世界が広がる。本作品以外では、小説「河は呼んでいる」が同名映画の原作として名高い |
屋根の上の軽騎兵 Le
hussard sur le toit |
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ジャン・ジオノ(原作)、酒井 由紀代 (訳) |
河出書房新社 |
時は19世紀。コレラが大流行中のプロヴァンス。イタリアの祖国独立のために奔走する軽騎兵の愛と冒険。自然描写が詩的で素晴らしいジオノの代表作。映画「プロヴァンスの恋」(1999年)の原作。 |
モンテ・クリスト伯 Comte
de Monte-Cristo |
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アレクサンドル・デュマ (著)、山内 義雄 (訳) |
岩波文庫 |
知人たちの陰謀で、14年間の牢獄生活を余儀なくされたマルセイユの船乗りエドモン・ダンテスが、脱獄を果たし、莫大な財宝を手に入れて、モンテ・クリスト伯と名乗ってパリの社交界に登場し、壮大な復讐劇を開始する、全7巻の長編大作。何度か映画化されている。 |
南仏プロヴァンスの12ヶ月 A
Year in Provence |
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ピーター・メイル(著)、池央耿(訳) |
河出文庫 |
ご存知、1990年代のプロヴァンス・ブームの火付け役、世界で100万部を売り上げたベストセラー。1989年度イギリス紀行文学賞受賞。リタイアしてリュベロンに移り住んだイギリス人元広告マンによる、プロヴァンスでのスローライフ賛歌。移住して1年は名所といわれる場所を訪れたことがなかったほどに、プロヴァンスの田舎暮らしを愛した。 |
南仏プロヴァンスの木陰から Toujours
Provence |
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ピーター・メイル(著)、小梨直(訳) |
河出文庫 |
「南仏プロヴァンスの12ヶ月」の続編。生きることの楽しさがあふれ出る、リュベロンでのリタイア生活記。「グルメ二本勝負」「パスティス講座」「シャトーヌフ・デュ・パープ試飲の心得」など、もくじを見るだけでもワクワクしてくる。ちなみに、本著の成功によるブーム到来で皮肉なことに静かな田舎暮らしを壊されてしまった著者は、すでにイギリスに戻って出版業を営んでいるとか。 |
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アート
Casa BRUTUS (カーサ・ブルータス) 2010年 06月号
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マガジンハウス |
「完全保存版!!」「きちんと知りたい!印象派とオルセー美術館の楽しみ方」「今年は名画が続々来日!今さら聞けない『印象派』のQ&A」「『ポスト印象派』展の見どころ、オルセーの至宝50点を厳選&解説」。
印象派ルノワール、ポスト印象派のセザンヌやゴッホらの創作意欲をかき立てた「印象派の聖地」として、南仏プロヴァンス・コートダジュール(特にアルルとエクサンプロヴァンス)が紹介されている。彼らの描いた風景を巡る旅のヒントになることうけあい。 |
Pen (ペン) 2010年 6/1号
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阪急コミュニケーションズ |
【完全保存版】1冊まるごと印象派。
19世紀に起きたアートの一大革命・印象派。それまでの写実的な宗教画や肖像画とは異なり、光をとらえ、大胆なタッチで生まれた絵画は、水面の一瞬のきらめきや、都市生活をスナップした。
印象派ルノワール、ポスト印象派のセザンヌやゴッホら南仏におなじみの画家をはじめ、代表的な15人の画家を、150点を超える作品、年表や美術館情報も掲載で、アートファンだけにとどまらず、南仏ファンも必携の一冊。
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植物
育てて楽しむはじめてのオリーブ |
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岡井 路子 (監修), LLPオリーブの本をつくる会 (編集) |
主婦の友インフォス情報社 |
南仏エクステリアに欠かせないオリーブだが解説本が多くない中、本書は、日本で入手しやすい品種の特徴や植えつけや剪定など栽培方法から自家製オイルや簡単料理のレシピまで、オリーブの全てが広く浅くわかる。読みやすいテキスト、写真やイラストもナチュラル系で好感もてる。南仏の古木にかなわないまでも、この本を参考にたくさん実をつける立派な木に育てて、オリーブを収穫して、myエクストラバージンオイルでパスタ作る日を夢みるなど、栽培モチベーションが上がってくる。 |
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ワイン
ポケット・ワイン・ブック 第5版
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ヒュー・ジョンソン著 |
早川書房 |
アカデミー・デュ・ヴァン青山推薦。世界中のあらゆるワインが国別にアルファベット順に解説・評価されている、世界で最も権威あるワインの辞書。ラベルからどんなワインか、何年物が当たり年か知ることができる上、相性料理やチーズ、コラムも満載。ポケットサイズなのに、実用的な情報がぐっと詰まっている。フランスはじめヨーロッパ、カリフォルニア、南米、南アフリカなど旅行には必携。英語版もあり |
もっとワインが好きになる―必携Wine好きノート
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花崎 一夫 (著) |
小学館 |
ぶどう品種・栽培条件、製造法、飲み方のポイント、世界の産地と主な銘柄(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、アメリカ、オーストラリア、チリなど)、格付け・ラベルの読み方、おすすめワイン100選など、サントリースクール主任講師による、ワインに関する実践知識が満載。
この一冊でワインが10倍美味しく楽しめ酔えてしまう。
ちなみにプロヴァンスには、ローヌ川沿岸の「コート・デュ・ローヌ地方(南部)Côtes du Rhône」と、地中海沿岸の「プロヴァンス地方Provence」の二大産地がまたがっている。本書では、ワインを通して(地域、地形、土壌、気候、ぶどう品種、歴史、ワイン銘柄・特色)、プロヴァンスを知ることができる。 |
今日はこのワイン!24のブドウ品種を愉しむ |
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野田 幹子 |
生活新書 |
ワインは原料となるブドウ品種によって個性が違い、それが楽しいのだが、初心者的にはハードル高く感じてしまう。そこで本書では、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネなど代表的なブドウ24種を、産地ごとに色・香り・味わい・相性料理などの特徴を説明。これさえ押さえておけば十分にワインが楽しめるようになっている。
なお、プロヴァンスおよびコートダジュールは、ワインの産地ではローヌ南部とプロヴァンスに相当するのだが、その代表品種として、赤はシラー(オーストラリアでも成功)とグルナッシュ(毎日気軽に楽しみたい)、白はミュスカ(心華やぐ愛らしさ)とマルサンヌ(北ローヌで真価を発揮)と紹介されている。 |
知っておきたい「酒」の世界史
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宮崎 正勝 (著) |
角川ソフィア文庫 |
酒の歴史は人間の歴史。ウォッカ、テキーラ、日本の焼酎など、世界中の全ての蒸留酒は、9世紀にイスラームで錬金術のために発明された「アランビク」からはじまった。メソポタミアからヨーロッパにもたらされた「液体のパン」ビール、ペストの恐怖が育てたウィスキーとブランデー、飲料水代わりだった大航海時代のワイン、冬の寒さが産んだ奇跡の酒シャンパンなど、世界をめぐる多様なお酒の意外な来歴と文化がわかる、おもしろ世界史。バーでのウンチクが増えます。幻の酒アブサンと南仏の酒パスティスの関係も。 |
フランスワイン愉しいライバル物語 |
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山本 博 |
文藝春秋 |
ボルドーVSブルゴーニュ、ロマネコンティVSシャトー・ラフィット──評価と人気を二分してきたフランスワインのライバル五百年史。「王様と女王様―ボルドーとブルゴーニュ」「世界最高の赤ワイン―ロマネ・コンティとシャトー・ラフィット」「シャトーのロスチャイルド―ラフィットとムートン」「甘い中のドライな合戦―ソーテルヌとバルサック」「黄金の泡と修道僧―ドン・ペリニョンとライバルたち」「ナポレオンとシトー派修道院―シャンベルタンとクロ・ド・ヴジョー」など、フランスワインの奥深さを教えてくれる手引書。ローヌ南部からは「法王の新邸と妙義山―シャトーヌフ・デュ・パプとジゴンダス」が選ばれている。フランスにはAOCワインだけでも400種類あり暗記しようとなると途方に暮れるけど、著者のポイントをおさえた文章と鼻につかない程度の体験談にグッと興味がそそられる。巻末には地図も載っているのが親切。一章読むごとに、実物を飲みくらべたくなる。 |
ワインが語るフランスの歴史 |
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山本 博 |
白水社 |
自然と人知の合作物ワイン。ワイン王国フランスの歴史には、新世界にはないロマンがある。本書はフランス史にからめてフランスの12の産地を巡り、主要ワインについて36章を割いて解説。石器時代から現代まで続く歴史を知れば、フランスワインがよりいっそう美味しく楽しく味わえる。
ワイン産地としてのプロヴァンスについては、「ギリシア植民市の誕生 ワイン文化発祥の地マルセイユ」、「聖ジャックの道、銀河 巡礼の道のワイン」、「アヴィニョンの幽囚 教皇の赤ワイン」に加え、「エニシダの復讐 ロワールの城とワイン」でロゼダンジューとタヴェルの比較、「フランスを襲ったブドウのペスト フィロキセラ以前と以降のワイン」でフィロキセラ発見の地としてアルルが紹介されているなど、ワインとの深いかかわりがあり、プロヴァンスの旅にもう一つの楽しみが加わる。 |
紋章
世界のサッカーエンブレム完全解読ブック
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斉藤 健仁、野辺 優子 (著) |
ニ文庫 |
ヨーロッパの主要リーグ(イタリア、スペイン、イングランド、ドイツ、フランス、オランダなど)のクラブチームや世界の強豪国の代表チームの胸に輝くエンブレム。マルセイユのキャッチフレーズの由来、モナコのユニフォームのデザインの由来、ニースの愛称の由来など、デザインだけにとどまらず、その作成のいきさつ、チームの歴史、地域とのかかわり、社会・文化などが簡潔に解説されていて面白い。街の紋章と同様、小さなエンブレムに大きなストーリーが込められているのがわかり、今までとは一味違った角度でサッカーが楽しめる。 |
紋章の歴史―ヨーロッパの色とかたち
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ミシェル・パストゥロー |
創元社 |
ヨーロッパを旅行すると、あらゆる場面で遭遇する紋章。公共施設、建築美術、文学、個人邸、車など日常にあふれている「歴史のあるロゴ」の、豊富な色彩や図柄の意味を知りたいと常々思っていた。
本書は、紋章の歴史、紋章の図柄と色彩、学問としての紋章など、紋章に関する基礎知識が、要点を抑えて簡潔に説明されている。この小さな記号デザインにこめられている情報が、とても大きいことを教えてくれる。
また随所にカラーの図や写真がふんだんに使われていて、視覚的にもとても理解しやすい。中でも、15世紀のプロヴァンス伯(アンジュー公)ルネ王による「騎馬試合の書」のイラストが素晴らしい。さらに巻末には紋章用語集もついている。次のヨーロッパ旅行が楽しみになる本だ。デザインをしている人にとっても大いに参考になるだろう。
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ヨーロッパの文様辞典
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視覚デザイン研究所 (編集) |
視覚デザイン研究所 |
文字よりも古い歴史をもつ人間の発明「文様」。
それぞれに意味や時代の好みがあるようだが、日本人の私にはチンプンカンプンだ。
本書は、動植物、幻獣、人物といったヨーロッパ諸国の工芸品などに使われている様々なモチーフを、ササン朝からアールデコまで網羅。写真や解説図をふんだんにつかってテーマ別・時代別に分類し、さらに時代背景やルーツまで詳説されているため、基礎知識が深まる。洋の東西の共通点や相違点も、興味深い。
大判であるため持ち運びには向かないが、例えばヨーロッパ旅行で出会った文様を帰国してから調べるための参考資料として、ぜひ手元においておきたい一冊だ。パラパラと眺めているだけでも、人間の想像力を巡る旅のようで、面白い。 |
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プロヴァンス語
南仏と南仏語の話 |
工藤 進 (著) |
大学書林 |
プロヴァンス語、ラングドック語、オーヴェルニュ語、ガストン語など、
フランス人口の約2割が母語とする、フランスの地方言語・南仏語(オック語)を解説。
単なる言語学的な解説だけでなく、南仏の範囲を規定するところから始まり、
山川海風といった南仏語を取り巻く自然環境や南仏語の発生と発達に影響を与えた歴史や民族をも解説している点で、
とても興味深く、南仏への理解度が高まる。
同じラテン語系とはいえ、北仏で発達した標準フランス語(オイル語)とは、一線を画す言語だということがわかる。
さらに、文例も掲載されているので、南仏語と総称されるグループの中でも、各々かなりの違いがあることがわかる。 |
オック語分類単語集 (新書)
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佐野 直子 |
大学書林 |
オック語のうち、フランス南西部のトゥールーズからモンペリエにかけて話されているラングドック方言の日常的な単語を約6500語収録。
南フランスで話されるオック語は、語彙や発音・表記の多様性が著しいが、オック語の仲間であるプロヴァンス方言の参考になるだろう。 |
トルバドゥール詞華集 (単行本)
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瀬戸 直彦 |
大学書林 |
11-13世紀ころに、オック語あるいはプロヴァンス語を用いて、南フランスやカタロニア、北イタリアなどで活躍した「トルバドゥールtroubadour」とよばれた吟遊詩人たちの、メロディをもつ叙情詩の作品集。
語彙には脚注があり、巻末には中世オック語の文法表もついているため、当時の人々に親しまれた騎士道と宮廷の愛の歌を知ることができる。 |
フランス語の歴史 |
島岡 茂 (著) |
大学書林 |
ラテン語系のなかでも、イタリア語とスペイン語は似ているのに、地理的にその間に挟まれているフランス語はあまり似ていない。けれども、プロヴァンス語は似ている印象がある。近代フランス語のなりたちには、ケルト、ローマ、ギリシアなど民族の歴史が大きく影響しているのであった(しかも南北でも違う)。それを特徴づけているゲルマン要因について平易に解説。巻末に各時代を代表する文例も。 |
キリスト教
守護聖人 聖なる加護と聖人カレンダー |
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真野 隆也 |
新紀元社 |
特定の職業や国・地域・都市などを守護する聖人や、プロヴァンスとなじみの深いマグダラのマリアやマルタに関するエピソードやエンブレム(宗教画などでどの聖人か見分けるための特徴)が、「芸術と学問の守護聖人」「女性たちの守護聖人」といったジャンル別に紹介されている。
巻末にはローマン・カトリックによる聖人カレンダーが付いていて、1年365日がどの聖人の日にあたるかが一目でわかる。 |
よくわかる聖人・聖女伝説 |
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千葉 桂子 |
新人物往来社文庫 |
信仰に身も心も捧げた聖女聖人。その代表的な38人の生涯と奇跡・伝説などをわかりやすく紹介。ヨーロッパでの美術館や教会めぐりの時に役立つ基礎知識が、文庫本だから安価で手軽に読める。
プロヴァンスとなじみの深い聖人では、巡礼路の街サン・ジル・デュ・ガールの由来となった聖アエギディウス(ジル)のエピソードが取り上げられている。 |
聖書のなかの女性たち |
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遠藤 周作 |
講談社 |
血ぬられたキリストの顔を布で拭ったヴェロニカ、マグダラのマリア、大司祭長カヤパの女中、ヨハネの首を得たサロメ、良妻賢母型のマルタ、ローマ総督ピラトの妻等、聖書のなかから11人の女性を選び、“苦しみの連帯感”ともいうべき人間論を展開。遠藤文学の基調音を奏でた、感動を呼ぶエッセイ。 |
キリスト教暗黒の裏面史 |
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ヘレン エラーブ (著), 杉谷 浩子 (翻訳), 井沢
元彦 |
徳間書店 |
欧米文明の根本ともいうべきキリスト教。その輝かしい発展の裏には、知られざる暗い歴史が隠されている。一神教は他者を一切認めない。カタリ派迫害や魔女狩りが例外なのではなく、自分たちのルールに従わない人々を異端・異教としてせっせと排除してきた2000年に及ぶダークサイドを、時系列に暴いていく。
とはいえ、いたずらにキリスト教を否定しているわけではないため、初期キリスト教の活動や正統キリスト教の成立過程を知る上でも、現代の西洋主導の社会を考える上でも、非常に参考になる。キリスト教になじみの薄い日本はもちろん、信仰厚い西洋でも中々こういった本にはなかなか出会えないだろう。 |
マグダラとヨハネのミステリー
The Templar Revelation,Secret Guardians of The True Identity
of Christ |
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リン・ピクネット&クライプ・プリンス(著)、
林 和彦(訳) |
三交社 |
ベストセラー「ダヴィンチ・コード」のネタ本。初期キリスト教に関するミステリーが流行となっている中、本著は西欧の秘教的団体、思想、伝承における、マグダラのマリアと洗礼者ヨハネに対する熱烈な崇拝に着目し、レンヌ・ル・シャトーの財宝の謎(聖杯伝説)にも迫りながら、カトリックから異端とみなされた、「もう一つのキリスト教」を明らかにする。なお、プロヴァンスは「マグダラのマリアの国」として紹介され、マグダラのマリアの遺骨を御輿にするサン・マクシマンの祭り、ジプシーの信仰対象の黒い聖母像、中世の一大勢力テンプル騎士団について考察している。プロヴァンスにはキリストの死後にマグダラのマリアたちが流れ着いた伝説が残っていたり、プロヴァンスの守護聖人はマグダラのマリアと洗礼者ヨハネだったり、ローヌを挟んだ対岸は異端カタリ派の楽園だったり…正統派から抹殺された人たちの土地であるわけだ。 |
テンプル騎士団の謎 |
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レジーヌ・ペルヌー(著)、
池上俊一(監修)、南條郁子(訳) |
創元社 |
プロヴァンスをはじめ南仏には寄進荘園がたくさんあったし、プロヴァンス伯は13〜15世紀まで名目上とはいえエルサレム王の称号も兼ねており、テンプル騎士団とは無関係ではない。実際、マルグリット・ド・プロヴァンスは夫である聖王ルイ9世とともにエルサレムに遠征している。
本書では、怪しげな憶測やオカルト的な伝説を排し、テンプル騎士団の成立・発展・活動・最期を、あくまでアカデミックな立場で解説。また、絵で読む世界文化史シリーズらしく、写真や図版をふんだんに使って理解しやすい工夫がしてある。翻訳も全く淀みがなく、テンプル騎士団の基本知識はこれ一冊で十分に押さえられる。 |
フランスにやって来たキリストの弟子たち―「レゲンダ」をはぐくんだ中世民衆の心性 |
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田辺 保 |
教文館 |
フランス民衆の心に深く根をおろしたイエスの弟子たちの生涯の物語を、フランス各地に探訪したエッセイ。とりわけ、地中海の玄関ともいうべきプロヴァンスには、アルルに流れ着いたマリアたち、ローヌ河の怪物を退治したマルタ、洞窟で祈りの生活を送ったマグダラのマリア、聖杯伝説のアリマタヤのヨセフなど、聖人たちの伝承・信仰が数多く残っており、それをテーマに旅するときに本書は大いに役立つ |
南仏プロヴァンスの生活雑貨「トランシス」>プロヴァンスの本〜お勧め〜
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